Eコマースで集客をする際、サイトのアクセス数に注目しがちですが、重要な指標はこれだけではありません。
タイトルにもある通り、コンバージョン率(CVR)を検証することが重要なのです。
本記事では、Eコマースでコンバージョン率を最適化(CRO)する方法について見ていきます。
コンバージョンは
本題に入る前にまずは、コンバージョンについて解説します。
conversion(コンバージョン)とは本来、「変換」「換算」などを意味する英単語ですが、WEBマーケティングではこれらの意味が変わります。
WEBマーケティングにおいてこの単語は、「Webサイト運営の目標を、ユーザーが達成する」といった意味で利用されます。
ECサイトですと、多くのサイトが「サービスや商品を買ってもらうこと」をサイト運営の目標にしていることでしょうから、ユーザーが購入したという行動を取ることで、コンバージョンしたと言えるわけです。
別の例を挙げるならば、雑学を解説するサイトがあったとして、このサイトのコンバージョンは、「コンテンツ化された雑学を、ユーザーが楽しみながら利用する」などといったことが考えられますね。
コンバージョン率最適化
コンバージョンの意味から推測できると思いますが、コンバージョン率(CVR=ConVersion Rate)は、サイトを訪問した全ユーザーのうちで、サイト運営側が目標とする行動を達成したユーザーの比率です。
そして、サイト運営者が求める行動をするユーザー比率を上げる対策のことを、「コンバージョン率最適化(CRO)」と言うのです。
CROの正式名称は、「Conversion Rate Optimization」です。
Optimizationは、SEO(検索エンジン最適化)の正式名称にも含まれていますね。
コンバージョン率は、次の方法で算出できます。
CVR(%)=コンバージョン数/全サイト訪問者数×100
コンバージョンとは、サイト運営側が決められるため、それによってコンバージョン率は大きく変動します。
仮にAmazonが、「1ユーザーあたり合計5000円分購入」「1ユーザーあたり合計1万円以上購入」の両方をそれぞれコンバージョンと設定した場合、異なるコンバージョン率が算出されます。
このように、何を基準に目標を決めるかが非常に重要であると言えます。
また読む:もう失敗しない!SEO対策会社に見積もりを出す前に知っておくべきこと
なぜCROが重要なのか
Eコマースで集客をする際にCROが重要な理由は、CROが集客の成果を表す指標であるからです。
①アクセス数だけでは集客を評価できない
Eコマースが広告出稿やSNS集客を行い、サイトのアクセス数が増加したとします。しかしながらアクセス数増加だけでは、集客が成功したとは言い切ることができません。
一般的にECサイトが広告出稿を行う理由は、自社の商品を多く売ることにありますから、アクセス数が増加したといっても、購入金額や件数が以前と変わらなければ、集客の効果は薄かったと言えます。
このように集客効果の実態は、サイトのアクセス数だけでは把握できず、コンバージョン率の分析を通じて、より明確に把握できるようになるのです。
②集客の無駄を省ける
CROを通じて、集客の無駄を省けるかもしれません。
仮に、とあるECサイトが年間売り上げ1億円を目標にしながらも、その半分しか達成できなかった場合は、さらなる集客方法を模索すると思います。
しかしながらCROをする余地がまだ残されている場合、これを無視して他の集客を模索するのは、非常に無駄が多いと思います。
コンバージョン率の最適化は色々な対策を通じて実現できますが、これらの中にはサイトの改善など、費用を抑えて実現できることも少なくないからです。
このように集客の無駄を抑える点でも、コンバージョン率の最適化は有効な対策と言えるでしょう。
③CROを重視する企業が増加
②では、「CROを通じて集客コストを抑えられる」とお話ししましたが、近年ではこの行動を起こす企業が少なくありません。
背景にあるのが、新型コロナの流行や、多くの企業がSNSで集客を行なっていることにあります。
新型コロナウイルスの流行で、Eコマースの市場規模はより一層拡大しましたが、この過程で消費者のECサイト利用機会も増加しました。
より多くのユーザーがEコマースに集中するようになったため、ECサイトは今まで以上に、激しい顧客の取り合いをする必要が生じました。
多くの企業がSNSやウェブサイトを持っていることから、集客の選択肢は色々あると思います。
様々な集客を行いながらも、多くの企業がコンバージョン率を意識したことで、集客コストの削減に努めるようになったのです。
平均のCVRはどれくらい?
ECサイトの平均的なCVRは、1~3%とされています。
ECサイトのCVRは、金融や法律、B to Bに関するサイトよりも低い傾向にあります。
またECサイトのCVRは、流入経路によって大きな違いがあり、広告経由での平均CVRは0.59%なのに対して、検索流入による平均CVRは2.81%でした。
検索流入でのCVRの方が高いのは、どのジャンルのサイトでも見られる傾向です。
その理由は、検索をしてそのサイトを訪問するユーザーの方が、何かのために行動しようという意欲が高く、結果としてコンバージョンの達成につながりやすいのです。
ジャンルごとのEコマース平均CVRを見ると、次のようになります。
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ジャンル | 平均CVR |
---|---|
ギフト | 4.9% |
ヘルスケア | 4.6% |
アパレル | 4.2% |
その他 | 3.4% |
スポーツ | 3.1% |
ジュエリー・コスメ | 2.9% |
大手チェーン | 2.3% |
インテリア | 2.3% |
自動車 | 2.2% |
ホームセンター | 1.7% |
家電 | 1.4% |
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このジャンルごとの平均CVRを見て分かることは、安価な価格帯の商品や消耗品が多いジャンルほど、平均CVRが高いということです。
また平均CVRが高いジャンルは、贈呈目的で購入されやすいと言えます。
贈呈目的で購入するということは、サイトを訪問した際からユーザーの目的が定まっているので、そのサイトで商品を購入する可能性が高いのです。
家電やホームセンター、自動車のEコマースも、サイトを閲覧するユーザーはそれなりにいると思いますが、これらは頻繁に購入するような商品ではありません。
そのため、頻繁に購入され、価格帯がより安価で、贈呈用の購入が多いジャンルの方が、訪問したユーザーが買っていく確率が高いのです。
CVRが低いのはなぜ?
ジャンルごとの平均CVRをご覧いただいたらお分かりのように、Eコマースでもサイトによっては、あるべくしてCVRが低いということも考えられます。
ジャンルの性質に依ることであれば、特に改善すべきではありませんが、原因が分からなければ突き止めるべきですね。
CVRが低いことには、他にどのような原因があるのでしょうか?
①広告出稿先が適切でない
ECサイトの広告出稿先が、適切ではない場合です。
不適切な例を挙げるならば、ヨーロッパの観光地を紹介する記事上に、アフリカへの航空券予約サイトの広告を掲載するようなもので、出稿先を間違えると広告を出す意味が薄れてしまいます。
そのECサイトを求めているユーザーがそれほどいない場所に、広告を出すわけですから、CVRが上昇しないのは必然です。
②購入に熱心ではない
以前、Eコマースを利用するユーザーの多くは、PCを利用していましたから、ユーザーは「インターネット環境がある場所で、欲しい時にサイトを訪問する」というように、サイト訪問機会が限られていました。
そのため、当時にCVRという指標があれば、今よりもはるかに高かったと思います。
しかし現在では、外でもスマホがあればECサイトにアクセスできるため、ユーザーの中には、商品を購入するつもりがなく、ただ商品ラインナップを眺めているだけという層も一定数います。
全員が購入に熱心ではないことを、サイト運営側が改善しようとする必要はあまりありませんが、このようなユーザー層が一定数いることは把握しておくべきでしょう。
③サイトの導線が分かりにくい
訪問→商品検索→購入までの導線が分かりにくいサイトは、ユーザー離れを引き起こしやすいです。
特に、サイト間での競争が激しいジャンルでは、検索が分かりにくいことを動機として、他のサイトへ乗り換えることも容易ですから、導線が分かりにくいのは致命的と言えます。
導線以外にも、不明な点を解決できる「よくある質問」ページや、お問い合わせフォームが不足していると、「ただでさえ分からないのに、解決する術もない」として、ますますユーザーの不満を高める可能性があります。
④市場環境の変化
政情不安、為替変動、株価、物価、収入の増減などの事情は、Eコマースにも大きな影響を及ぼします。
規模が大きいEコマース市場では、国外ユーザーとのまとまった取引があったり、商品の仕入れを行っています。
そのため、上記で挙げたような事情が発生すると、自分たちの計画通りにビジネスが進まない可能性がありますね。
2023年11月には、米国でブラックフライデーが開始しましたが、インフレや金利上昇の影響があり、平年のような商品の売れ行きとなるか、懸念する声も少なくありません。
EコマースのCROを行うには何をしたらいいのか
Eコマースのコンバージョン率を上げて、CROを行うには、どのような対策を行えばいいのでしょうか。
①ターゲットを見直す
商品のターゲットと、実際に訪問しているユーザー層の間に乖離が無いかを、確認する必要があります。
ターゲットとサイト訪問者が乖離していると、アクセス数は多いのに商品は購入されないという事態になり、CVRの低下を招きます。
自分たちの売り出す商品が、どのような人におすすめなのかを把握し、それに適したターゲットを再設定しましょう。
②商品の説明を徹底する
「思っていたのと違う」とユーザーが感じることの無いように、商品ページに書く商品説明を徹底する必要があります。
そのためには、商品写真をさまざまな角度から撮影したり、サイズ感や使用方法についても言及する必要もあるでしょう。
③モバイルファーストへの対応
現在では、Eコマースを利用する人の大半がスマホを利用しています。
そのためECサイトも、スマホでの操作を容易にする必要があるでしょう。
サイト運営者側は、サイトの編集を普段PCで行うと思いますが、スマホでの利用を視野に入れたサイト設計を、その都度行いましょう。
また読む:モバイルSEOの最新動向を調査して集客を最大化しよう
④レコメンドツールの活用
ECサイトでよく見られる、「あなたへのおすすめの商品」を紹介するレコメンドツールの導入は欠かせないでしょう。
レコメンドツールの導入方法はさまざまですが、例えば関連性や補完性ある商品同士のリンクを貼り付けておいたり、生成AIの力を借りながら関連性を結びつける方法を探るのもいいですね。
関連商品の表示が多くて的確であるほど、ユーザーにより多くの買い物をしてもらうことができるでしょう。
⑤リンク切れや誤字が無いようにする
今では多くの人がEコマースで商品を購入するため、ネット通販への抵抗は以前より弱くなったものの、やはりリンク切れや誤字、不自然な文章が表示されるサイトには抵抗を感じると思います。
運営者側のただのミスだったとしても、ユーザーにとっては不安を感じるミスでもあるでしょう。
またこれらのミスがあると、書きたかったことが伝わらなくなる可能性もあるので、文章やリンクが問題が無いかを定期的に確認するのがおすすめです。
⑥決済手段を複数用意する
決済手段を幅広く用意しておきましょう。
クレジットカード決済は当然導入し、デジタル決済に不慣れな高齢者や、カードをまだ所有できない未成年にも利用できる決済方法を用意するのも欠かせません。
そのため、コンビニ決済といった手段を用意しておくべきでしょう。
⑦購入までの導線をわかりやすく
先述の通り、購入までの導線が分かりにくいECサイトは、ユーザーの離脱を招きやすいです。
そのため、サイト訪問から購入までの道筋がわかりやすい、サイト設計をする必要があります。
Amazonを例にいくつかポイントをお話しするならば、「どの画面を表示しても、商品カゴが表示される」「会員情報や決済情報の入力フォームが大きい」「メニューの配色がわかりやすい」などがあります。
⑧クーポン発行や割引セール
先ほど、CVRが低い原因に「購入に熱心では無い」と挙げましたが、サイト運営者は、ユーザーが購入に前向きになるよう仕向けることが可能です。
例えば、クーポン発行や割引セールなどを通じて、購入するタイミングが今であると演出をして、商品を購入する動機をユーザーに与えられます。
しかし、クーポンや割引セールの実施には注意が必要で、割引ありきのビジネスにならないようにすることです。
クーポンに依存した集客を行うと、今後もクーポンを発行しないといけなくなるため、あくまでも副次的な集客にとどめておきましょう。
まとめ
本記事では、Eコマースのコンバージョン率最適化について解説しました。
コンバージョン率とは、サイトのアクセス数以上に、集客の出来栄えを反映できる指標であると思います。
そのためECサイトの運営には、コンバージョン率の指標を活用しながら、集客を行なっていきましょう。
よくある質問
EコマースのCVRが低い場合、どのような最初のステップを踏むべきですか?
EコマースのCVRが低い場合、最初に行うべきステップは、ターゲット顧客と現在の訪問者層の間に乖離がないかを確認することです。ターゲットと実際の訪問者が異なる場合、アクセス数に関わらず購入が進まない可能性が高くなります。
次に、サイトのユーザビリティを見直し、購入プロセスの簡素化や導線の明確化を図ることが重要です。また、広告出稿先の適切性や、商品説明の充実、モバイル対応の最適化なども検討すべき要素です。
コマースサイトでCROを効果的に行うための具体的な戦略は何ですか?
CROを効果的に行うための戦略には、以下のようなものがあります。まず、ユーザーのニーズに合わせた商品の展示や説明を徹底し、購入意欲を高めることが重要です。
次に、モバイルファーストのアプローチを取り、スマートフォンユーザーの利便性を高めること。
さらに、レコメンドツールの活用により、ユーザーに合った商品を効果的に提案し、購入機会を増やすことが有効です。また、サイト内のリンク切れや誤字のチェック、多様な決済手段の提供も、ユーザー体験の向上に寄与します。
エディター
Eri Pinar による – ウェブ開発、マーケティング、オンライン、SEO。副著者 – Miura & Shimura。